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知的障害と障害年金

こんにちは、東京都北区で障害年金の相談・裁定請求に特化した事務所を運営する
社会保険労務士の中村健司です。
本日は、知的障害と障害年金と題して、知的障害とはどのようなものか?知的障害
で障害年金を請求する場合の注意点等を以下にまとめて行きます。
 
知的障害と障害年金
 知的障害も障害年金請求の対象傷病となります。
 障害年金を請求する場合には、統合失調症・うつ病などと同じ精神の診断書を
 使用します。
 
知的障害の特徴
 知的障害は、統合失調症・うつ病等と異なる点として以下の特徴が挙げられます。
 1,先天的なものである。
 2,服薬等で根本的な治療は出来ない。
 3、「疾患」というよりは「個性」という側面が強い。
 ※上記1~3については、後日ブログで紹介する「発達障害」にも共通する事柄と
  いえます。
 
知的障害とは?
 知的障害(精神発達遅滞)とは、知的能力の発達が同年代の人に比べて低い水準にとどまっているため、生活に支障が生じ、持続的に援助  
 が必要な障害 です。
 例えば、複雑な事柄やこみいった文章・会話の理解が不得手であったり、おつりのやりとりのような日常生活の中での計算が苦手だったり 
 りすることがあます。
 また、障害のあらわれ方は個人差が大きく、少し話をしただけでは障害があることを感じさせない方もいます。しかし、自分のおかれている   
 状況や抽象を理解することが苦手であったり、未経験の出来事や状況の急な変化への対応が困難であったりする方は多く、支援の仕方も
 一人ひとり異なります。
 知的障害は、おおむね発達期(18歳まで)にあらわれるものとされています。
 ※18歳以降に知的障害と認定される場合もあります。
 
IQによる区分
 知的障害は、知能指数(IQ)により、以下のように軽度~最重度までに区分されて
 います。
 軽度 (IQ50~IQ69)
 中等度(IQ35~IQ49)
 重度 (IQ20~IQ21)
 最重度(IQ20未満)
 
療育手帳とは?
 知的障害のある方が一貫した指導や相談、福祉サービスなどの援助を受けやすくするために交付される手帳となります。
 療育手帳の対象者は、原則として18歳未満ですが、以前から症状があって申請していなかった方や、18歳以上になってから
 知的障害があると判明した方も対象となります
 療育手帳を所持している方は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスや、
 各自治体・民間事業者が提供するサービスを受けることができます。
 療育手帳制度は、各自治体において、運用されているため各自治体により、名称も
 異なります。
 例えば 東京都は愛の手帳、さいたま市は緑の手帳等となります。
 ※療育手帳を所持している方は、令和4年度の調査において、全国で約120万人となります。
 
 知的障害について、概要を見てきました。
 これ以降は、知的障害で障害年金を請求する場合の、特徴及び注意点について考察
 していきます。
 
知的障害の障害等級
障害年金において、知的障害の障害等級は以下の通りとなります。☟

知的障害等級
※上記の障害等級は、障害認定基準に規定されたものとなります。
 知的障害は、先天的なものであるため実務上は障害基礎年金での
 請求となるため、障害等級は1級または2級のみとなります。

 例えば、20歳以降就労しているときに初めて知的障害と診断
 されても、障害厚生年金ではなく障害基礎年金での請求
となります。
 
障害年金の請求はいつから?
 知的障害の場合は、20歳になった時点で障害年金の請求が可能となります。
 
障害年金額
障害基礎年金額_コピー
※上記金額は、年額となります。
 子供がいる場合、年金額に子の加算が上乗せされますが、配偶者がいる場合
 配偶者の加算は上乗せされません
。(配偶者の加算は、障害厚生年金2級以上の場合
 に加算されます。)
 
障害年金生活者支援給付金
 上記の年金額のほかに、以下の要件を満たす場合には障害年金生活者支援給付金が
 支給されます。

 ①支給要件☟
障害年金支援給付金要件

②支給金額☟
支援給付金額

所得制限
 知的障害は、20歳前傷病になるため障害基礎年金が受給できても所得制限が伴います。
 所得制限についてはこちら☟
 20歳前傷病
   但し、現実的には知的障害の方が高額の所得を得るケースはあまりなく上記の所得
  制限を受けることは少ないようです)
 
初診日及び保険料納付要件
 知的障害は、生来的な障害のため初診日及び保険料納付要件は問われないことに
 なります。
 
障害年金請求時の診断書
 障害年金請求時には、「精神」の診断書を使用します。☟
 精神の診断書の裏面は、「日常生活において自分で自分の用事を行えるか」の判定基準
 として、2,日常生活能力の判定欄3,日常生活能力の程度の欄が設けられています。
 2,日常生活能力の判定欄と3,日常生活能力の程度の欄を点数化し、後述する障害等級
 の目安の表にあてはめることにより、等級の目安がわかるようになっています。

障害年金診断書はこちら☟
精神の診断書(裏)

2,日常生活能力の判定欄について・・・
 上記図の左側が該当します。
 項目としては・・・
 (1)適切な食事
 (2)身辺の清潔保持
 (3)金銭管理と買い物
 (4)通院と服薬(要・不要)
 (5)他人との意思伝達及び対人関係
 (6)身辺の安全保持及び危機対応
 (7)社会性
 
 全部で7項目あり、各項目とも以下の4段階評価となります。
 「できる」「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」「助言や指導があれば
 できる」「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」
 各項目とも左から右へ移動することにより、症状が重くなります。
 
 評価する際の注意点として、単身で生活するとしたら可能かどうか で判断することに
 なります。
 
 例えば(1)適切な食事について、一人で生活した時に、栄養バランスを考えた献立を
 考え、食材を購入・調理し、適切な量を食べ、後片付けまで自分ででき、毎日3食きちん
 と食べられる等、一連の行為ができて初めて「できる」となります。
 
 7項目の4段階評価には、以下の点数がつけられています。
 ・できる・・・1点
 ・おおむねできるが時には助言や指導を必要とする・・・2点
 ・助言や指導があればできる・・・3点
 ・助言や指導をしてもできない若しくは行わない・・・4点
 
 7項目すべてに点数(1点~4点)をつけた後は、点数の合計点を7で割り平均をだします。
 
3,日常生活能力の程度欄について・・・
 上記図の右側が該当します。
 精神障害と知的障害に分かれています。知的障害がある場合は知的障害の欄に記入し
 精神障害がある場合は、精神障害の欄に記入します。
 
 評価は5段階に分かれています。(精神・知的欄とも評価基準は同じとなります・。)
 
(1)知的障害を認めるが社会生活は普通にできる。
(2)知的障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が
   必要である。
(3)知的障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が
   必要である。
(4)知的障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要
   である。
(5)知的障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が
   必要である。
 
 上記1~5のうち、該当するもの1つに〇がつけられます。
 
障害等級の目安
 医師に記載してもらった診断書の2,日常生活能力の判定欄と3,日常生活能力の程度の
 欄を利用して、障害年金の等級(1~3級)の目安を知ることができます。
 障害等級の目安はこちら☟
 障害等級の目安_コピー

 ※上記等級の目安について・・・
 縦軸に、日常生活能力の判定欄の平均値・横軸に,日常生活能力の程度の欄の程度が示されています。
 仮に、日常生活能力の判定が3.4 日常生活能力の程度が(4)とした場合に「障害等級の
 目安」表にあてはめてみると、縦軸と横軸が交わる個所が「2級」となります。
 ただし、「障害等級の目安」はあくまでも「目安」であり、障害等級の決定については
 その他の要因も加味したうえ総合的な判断によることになります。
 
その他考慮すべき事項
知的障害の障害等級決定については、障害等級の目安のほかに以下に掲げることも
考慮して決定されます。
①知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。 また、知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加 重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

② 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
 
③ 就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労 をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。  したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を 
 考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との 意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活       
   能力を判断すること。

療育手帳は診断書の代わりになるか?
 知的障害の場合、他の精神障害と異なり病院またはクリニックを継続的に受診し、服薬を行っているわけではないため、精神科を標榜する医師でも
 知的障害の方の診察が苦手という方もいらっしゃいます。
 療育手帳を所持している事が知的障害の証明になるため、診断書は不要という考え方もありますが、障害年金の請求において診断書を提出することは
 必須条件となります。  

 ※精神科を標榜する医師が知的障害を診察しない事も多々あるのも事実です。
 
病歴・就労状況等申立書
 知的障害の場合、病歴・就労状況等申立書は出生時点から3~5年ごとに区分して
 障害年金の裁定請求時までの状態を記載することになっていましたが、令和2年10月
 から以下の書き方に変更になっています。(下図の①に注目してください)
知的障害病歴就労状況等申立書_コピー
 
まとめ
 知的障害と障害年金の関係についてみてきました。
 知的障害で障害年金を請求する場合のポイントとして以下のことが挙げられます。
 ①知的障害は、他の精神障害と違い根本的な治療は出来ない。
 ②「障害」というよりも「個性」である。
 ③初診日・保険料納付要件は不要である。
 ④障害年金を受給できたとしても、基礎年金のみの支給であるため支給金が
 少ない。また、障害年金のほかに所得がある場合には「所得制限」により
 年金額の全部または一部が支給停止される可能性がある。
 ⑤知的障害を診察してくれる医師が少ないため、他の精神障害に比べ診断書
 の入手が難しい。
 ※知的障害またはその他精神障害で障害年金の請求を考えていらっしゃる方
  障害年金の申請において、疑問点やお悩みのある方は当事務所までご連絡
  ください。適切なアドヴァイスをさせて頂きます。


 
2024年12月22日 12:08

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